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ロシア、中央アジアの旅から帰国し、2週間が経った。
一ヶ月近い旅は終始順調で、体調などは東京にいるよりもむしろ快調だった。
が、帰国を目前にし、トランジットで立ち寄ったタシケントで、貧乏旅行の洗礼を受けた。
以下はまるでゲル状の空気に包まれたタシケント空港のトランジットホールで書き付けたものだが、なにせWi-Fi環境すらなかったため、アップを失念していた。

予定通りアルマトイを出発し、ウズベキスタンのタシケント空港に到着した。
ネットの情報では、飛行機を下りるとバスが2台停まっていて、1台が入国用、もう1台がトランジット用とのことだった。
僕はウズベキスタンには入国せず、というか急に決めた日程だったものだから、ビザを取る時間がなく、入国する資格がなく、トランジット客として、空港内で成田への乗り継ぎ便を待たなければならない。
係員にトランジットだという旨を伝えると、係員はちょっと考えてから、どっちのバスでも構わないと答えた。
空港ビルに着くと、さっきの係員を含む3人が「こっちへ来い」という。そのまま荷物検査のところまで誘導される。僕以外にトランジット客は見当たらない。なんだか連行されているみたいだ。ここへ来て、バスが振り分けになっていなかった理由がわかった。
訊くと、「イエス、オンリーユー」と眠そうな声が返ってきた。

タシケント時間で深夜0時になろうとしている。
どうやらこのトランジットゲートは相当にヒマのようだ。荷物検査の係員たちが寄ってきて、カメラ、パソコンを穴が空くほどチェックし始め、画像を見せろとまで言われる始末である。
面倒くさいが、見られて困るもののないので適当につきあっていると、突然「オーケー」とのこと。ものの1分で飽きたらしい。

晴れて乗り換えゲートまで来ると、数えるほどしか人がいない。正確には7人しかいなくて、そのうちの4人が係員である。
それだけではなく、なんというか、活気というものがまるでない。別に乗り換えゲートに活気が必要なわけではないが、少なくともここは一国の首都の国際空港である。トランジット客で混み合っていてもおかしくないはずで、カフェやバーでは旅の途中の外国人がワイワイやっていてもいいものである。とにかく静かで、壊れた換気扇のカタンカタンという音だけがむなしく響いていた。

嫌な予感がした。
僕の持っている成田行きのチケットは、翌日の22時05分にボーディングとなっている。要するにこのサブい空間で22時間を過ごさなければいけない。

帰国後のことを考えると、まずは寝て、昼夜のサイクルを立て直したい。が、横になれそうなところはどこにもない。別にベッドをくれといっているわけではない。ベンチやソファーでいい。安眠を得られるなら有料でも構わないと思っていたが、そんな施設はない。ベンチはずらりと並んでいるのだが、固定された肘掛けによって一席一席が区切られてしまっている。これでは身体が伸ばせない……。

ロクに眠ることはできず、身体をクネクネさせて浅い仮眠でつないでいると、容赦なく朝がきてしまった。
眠いが、それ以上に腹が減っているような気がする。
人気のないカフェに言ってみると、ケーキとサンドウィッチがあるが、どうもひからびているようで食指が動かない。

何より、驚くべきはその値段である。
サンドウィッチ10US$。チーズケーキ10US$。
東京都心の有名店以上ではないか。

さらに、レジ横のスナックの棚を見て眠気が吹き飛んだ。
プリングルス、13US$。
ぼったくりも甚だしい。

踵を返し、隣りのハンバーガーショップに入ってみると、普通のハンバーガーが7US$で、これも普通にバカ高いが、さきほどのプリングルスの後ではかわいく思えてしまう。そしてこれがまたマズそうである。

これはまいった。まだあと15時間ある……。

最後の望み。残り一軒のバーに行ってみると、食べ物はスナック程度しかない。ふと見ると、プリングルスが5US$とある。さっぱりわけがわからない。しかも500mlのビールが2.3US$と、これだけはかなりお買い得である。
かといって、何も食べずにビールばかり飲んでもいられない。

どうしていいかわからないまま、なかなか過ぎない時間の中で悶えている。
そして、最悪の懸念事項は、都合2泊、横になれないまま成田に着くということである。

もう少し早く日程を組み、ビザを取っていればと思ったところで祭りである。
時として計画性は旅を快適にするのかもしれない。

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2016.4.15 東京


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