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12月28日。今日あたりが仕事納めではないだろうか。
こちらは相変わらずシルクロードをさまよいながら、昨日、最終目的地のカシュガルに着いた。
ひととおりの仕事を終え、羊肉のケバブとウスビール(新疆産のビール)を堪能し、明日にはウルムチ、成都を経由し、26時間かけて帰国の途につくこととなった。

昨日から泊まっているホテルは、特に不便はないのだが、少々値が張るため町の中心部にあるユースホステルに移ることにした。部屋に2段ベッドが3つで50元(約800円)のドミトリーは値段なりの設備だが、たまには若ぶった自分に酔ってみるかとチェックインを済ませた。ちなみに、こういう宿ではタオルは貸してくれない。日本を出るとき荷物にタオルを入れるのを忘れてしまったものだから、部屋にザックを置くと、昼ごはんとタオルを求めて町へ出た。

宿の周りは「老城景区」といってウイグル風のレンガや土壁の建物が軒を連ね、漢民族の姿はほとんど見かけない。
カメラ片手についついウロウロしてしまい、2時間ほどして宿に帰ると、フロントがなにやら騒がしい。
ドアを開けようとすると、中から「入らないで!」と女性スタッフの声がし、同時にブシューッと白い粉状の煙が舞い上がった。口と鼻をふさぎながらよく見ると、彼女は重そうに消火器を持ち上げ、レバーを握っている。。
「煙が出てるの」
たしかに、壁からゆらゆらと煙が立ち上っている。

どうやら壁の奥には「暖气」(セントラルヒーティング)のパイプが通っていて、もしかしたら空焚き状態になり、周りの建材を焦がしているのかもしれなかった。
「壁の中の火は消火器では消せないよ。通報したほうがいい」と言ったところでまったく聞く耳を持たない。
その後も水をかけたり、ワーワー言いながら友人に電話して対処方法を訊いたりしているが、いっこうに埒は明かず、むしろ煙はひどくなっている。
その模様をとなりで見ていた宿泊客の若い中国人に、「なんで彼女らは通報しないんだ?」と訊くと、
「通報して消防が来たら、客は全員退去させられるし、最低3日は営業停止になるんだよ。それが怖いんだと思う」
……おいおい、どういうこっちゃ。

こんなところで焼け死ぬかもしれない恐怖に怯えながら夜を明かすなんてまっぴらごめんである。
「大変なところ申し訳ないが、やっぱり泊まるのやめるからお金返して」
スタッフはもうチェックインしただろうなどとわめいたていたが、結局は全額返してくれた。わめかれる筋合いはないと思うのだけれども……。

新疆に限らず、いまだに中国の地方都市では外国人が泊まれる宿泊施設が限られている。これから探すのも面倒くさくなり、しかたなく元のホテルに戻ると、昨日と同じ部屋しか空いていないとのことである。
聞けば、年末でどこもいっぱいなんだとか。中国は春節を祝う国なのだが新疆は違うみたいだ。
ともかくも、同じ部屋に戻り、同じベッドに寝転がっている。

来年の確定申告ではタオル代6元(100円)を経費として計上しなくてならない。

 

 


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