Read More


74

Share

先月上海に滞在した際、浦東にオープンしたばかりの某高級ホテルに泊まった。いわゆる5ツ星ホテルである。

今回は出版社が手配してくれたからありがたく泊まらせてもらったが、僕は仕事で海外に滞在するとき、こういった高級ホテルに抵抗を感じることがある。

理由は3つ。

ひとつは、ベッドが軟らかすぎる。朝起きると決まって腰が痛い。

ふたつめはインターネット使用料がやたらと高い。24時間で20ドルくらいする。中級ホテルでは無料サービスが主流になったというのになぜだろうか。ひょっとすると会社の経費で落とせる高級ビジネスマンに照準を合わせているのかもしれない。迷惑な話だ。

三つめは、これは中国に限ったことかもしれないが、スタッフがいちいち英語で話しかけてくる。たとえ客が中国語で話したとしても、外国人であると分かった瞬間に英語をしゃべりつづけるホテルマンがやたらと多い。

時間がたっぷりあるプライベートで滞在するなら高級ホテルの利用価値もあるだろうが、仕事で海外に出ると一日中外出していることが多くなる。夜ホテルに帰ってきて、落ち着かないほど広い部屋でロクシタンのアメニティーやウェルカムフルーツを楽しんでる余裕はない。

まぁそれでも清潔な部屋や安心できるセキュリティーや教育の行き届いたスタッフという点では、「やはり5ツ星」と感心することもある。4ツ星以下には期待できない安定感とも言えよう。今回もせっかくだからそう思うことにしていた。

ところが、その5ツ星ホテルでとんでもない目にあった。

仕事から帰ってシャワーを浴び、24時間で120元(約1800円)のインターネットアクセスにしぶしぶ接続するべく、短パン姿でパソコンを開いていると、呼び鈴が鳴った。鳴ったと思ったらドアが開いた。服装から掃除係と思われる若い女性服務員と目が合う。あまりにも突然のことで言葉が出てこない。服務員は何か言いながら逃げるように部屋を出て行った。まるでスローモーションを見ているかのようだった。この時点で天下の5ツ星ホテルではあってはならない立派な「事件」である。その5分後、今度は呼び鈴が鳴る前にドアが開いた。入ってきたのはスーツ姿のマネージャーだった。

「Excuse me」

ノックなしで入ってきておいて「エクスキューズミー」である。僕が中国語で「ちょっと待ってくれ。いったいどういうことだ。」と問うと、このマネージャーはさらに英語で返してきやがった。

「おかしいだろう。何もかもがおかしいだろう。、まずは中国語でしゃべれ。」

あろうことか彼女の中国語第一声は「いや、ここは空き部屋かと思いまして」、だった。

5月から上海で開催されている万博に合わせて、市内にはかなり数のホテルが建てられた。開幕に間に合わなかったホテルもたくさんある。見込んだ来場者数から換算してホテルの数を増やすことは必要だったのかもしれない。しかし問題はソフトだ。スタッフの教育がしっかりできるだけの余裕をもった計画でもって万博を迎えられていれば、ひとりの若い女性服務員が中年外国人の見苦しい姿を見ることもなかったのかもしれない。

上海には20日間滞在した。結局万博には行っていない。


74

Share