一昨日のトークショーの中でも聞かれた、カンボジアのシェムリアプのことについて、過去5回訪れたことを振り返ってみた。
10数年前、ベトナムのホーチミン・シティーから陸路でカンボジアのプノンペンに入り、その後シェムリアプという、インドシナ旅の王道をたどった。
ベトナムからカンボジアに入った瞬間にアスファルト舗装が赤土の道へと変わっことに、リアルな国力の差を見た気がしたが、それから何度となくカンボジアを訪れているうちにいつのまにか赤土の道路を見なくなった。
ここ数年のプノンペンの都市化はよく耳にするが、シェムリアップの町もどんどん変わっている。鉄筋の建物が増え、カフェやブティックが次々とオープンしている。
初めて来たころと比べると、町は賑やかになり、当時の土臭さがなくなっているように思う。
オールドマーケットの近くにはパブストリートという華やかな通りができていて、夜になると大音量で音楽をかけるバーや、石窯で焼くピザを出すイタリア料理店などが軒を連ねる。それはもう、夜な夜なバンコクのカオサンやホーチミン・シティーのデタム通りを凌駕する騒がしさである。
4年ほど前に仕事で泊まったシンガポールに本店を持つ格式高い高級ホテルに、今回もたまたま仕事の役得で泊まったのだが、どういうわけか、4年前のパリッと張り詰めたような独特の雰囲気は明らかに色褪せていた。質が落ちていると言ってもいい。
10年前に100万人だった観光客は、今年350万人に達している。
アンコール遺跡にあぐらをかく観光都市にできたほころびが、ちょっとずつ町を蝕んでいるのかもしれない。そう感じる旅だった。
2016.9.26 東京