ジャカルタのスカルノ・ハッタ空港に降り立つと、ジャカルタをスルーして、ジャワ島の南側を鉄道でゆっくりと東へ向かい、最東端の港町、バニュワンギまで行ってきた。
バニュワンギからはすぐそこにバリ島が見える。
本四連絡橋などの発達の陰で用済みとなった小型のフェリーが、赤道を越えてジャワ島とバリ島の間で活躍しているのである。
そのままスラワジで2泊ほどして、今度は北回りでジャカルタに戻った。昨日の朝8時にスラワジを出た特急列車は、小さな駅をガンガンすっ飛ばし、17時すぎにジャカルタに着いた。
もう何年もアジアの電車に乗って写真を撮っているが、インドネシアではジャカルタ近郊のコミューター線から外に出たのは初めてである。
おそらくはローカル風情たっぷりなのであろうと、意気揚々に臨んだ取材だったが、インドネシアの地方線は驚くほどに整備され、洗練されていた。
全車両が空調完備されており、シートもしっかり作られていて、ほどよくやわらかい。UVカットされた窓は大きく開放感がある。上述のとおりスラワジ、ジャカルタ間を10時間乗りっぱなしてもなんらストレスがない。
車内販売もそこそこしっかりしていて、コーヒーを注文したら、これはいったい?と聞いてしまいそうになるほどに大きな砂糖がついてきた。これも気の利いたサービスの一環か。
乗客はみなさん中流階級以上というかんじで、お行儀よく、静かに音楽を聴いたり、タブレットで映画を楽しんでいたりするわけである。
要するに、つまらないのだ。
アジアの列車は近代設備が整うのに比例して、そこにはドラマがなくなっていく。
中国が良い例で、20年前の上海北京間の眠るのも惜しいほどにドキドキした車内の雰囲気は、今の新幹線には微塵も感じられない。
一方、高速バスの発達に伴い、タイ、インド、ベトナムの鉄道事情はむしろ後退傾向にあり、未だに刺激的である。
まさかインドネシアの国鉄事情がここまでとは思わなかった。
僕のように、アジアの風に吹かれて、異国情緒を味わいたい方にはおすすめのできない鉄道旅である。
果たして、スマトラはどうだろうか。
気になるところではあるが、とりあえずインドネシアの鉄道旅は今回でしばらくお休みとしたい。
2017.1.14 ジャカルタ 空港付近ホテル