パキスタンのペシャワールから、インド国境まで15㎞の町、ラホールへ10時間ほどかけてバスで移動した。
韓国製の立派なバスはちゃんとエアコンも完備されていて、水はもちろん、コーラやサンドイッチまで配られた。
何不自由なく快適にラホールへ到着。バスターミナルで待ち構えていたタクシーと交渉し、700ルピー(700円)で国境、通称ワガボーダーへ、すんなり着いた。
ワガボーダーには、国境のゲートを挟んだ両側の広場で、18:00から約30分、国旗降納にあわせて「フラッグセレモニー」というイベントが行われる。スタジアム状の会場には毎日両国から何千という見物客が集まる。こんなことをする国境は他にないだろう。しかも、インドとパキスタンである。
「我々はこんなにも仲良しであーる」と、少々強引にアピールをしているように見えなくもないが、なかなか面白いので、パキスタン、インド唯一の国境であるワガボーダーをする際は是非見ていただきたい。今のうちに行っとかないと情勢によってはなくなるかもしれない。
僕はインド側で見たのだが、国境ゲートの向こうにちらちら見えるパキスタン側の模様が気になって仕方なかった。
その日はインド側国境から30㎞のアムリトサルで一泊し、翌日、列車でデリーへ出た。
パンジャーブ州最大の都市、アムリトサルは、かのシィク教の聖地であり、総本山「ゴールデンテンプル」を擁する。
頭にターバンを巻いた、ザ・インド的な、あのいでたちの人たちがシィク教徒である。
デリーでは昔から安宿街で有名な、メインバザールという通りのホテルに泊まった。
前に来たのはまだ学生のときだから20年以上前になる。
この界隈、何も変わっていない。
細かい店などは入れ替わりがあっただろうが、通りの風情はあのころのままだ。
が、以前に比べてゲストハウスのしつこい客引きや、死んだ魚の眼をしたマリファナ売りの姿がぐっと減っているように思うし、全体的に治安も良くなっているように思う。
僕が歳をとってそのへんの感覚が鈍くなっているとも言えるが。
そして、パキスタンでは一滴も飲めなかったビールにありつくことができた。
インドでは(特に北インド一帯)、アルコールは決して開放的ではない。言い方を変えれば、飲酒は社会的にあまり良しとされていない。酒類を置いている食堂やレストランはほとんどないし、そのへんで酔っ払っている若者やおっさんはまずいない。
しかし、飲もうと思えばメインバザールには外国人向けのバーもあるし、少し歩けば酒屋もある。
バーに行くのもなんだしなぁということで、まずは近所の屋台へ。マリネされてオレンジ色に染まった鶏肉と、カード(豆腐のようなもの)を炭火で焼いてもらい、酒屋で常温のキングフィッシャービール(インドビール)を買って宿に戻った。ビールはインドの物価にしては結構高く、大瓶一本が120ルピー(200円)。
(屋台はメインバザールとRajguru Rdの交わるところあたりに、酒屋はそのままRajguru Rdを北へ5分ほど歩き、Desh Bandhu Gupta Rdを右に曲がってすぐ)
あとは宿の屋上にあるレストランで氷を売ってもらい、ひと風呂浴びてから、スパイスの効いた焼き鳥とカードをつまみに氷入りのビールを飲んだ。
パキスタンから国境を越えて、デリーまで怒涛の移動続きで(国境ではなぜか走らされた)だいぶ疲れていたようだ。
1本目のビールを飲み干したところでしっかりと酔いがまわり、食べ散らかしたままベッドに這い上がると、泥のような眠りについた。