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非常事態宣言発令後、郵便や宅配が届くとハンコを押して受け取るということをやめ、荷物は玄関先に置いてもらうようにしている。
といころが連休中、「ハンコが必要なんです」と言われ、ドアを開けることが何度となくあった。
すべては関西に住む学生時代の仲間や後輩からの現金書留であった。
フリーランス仕事激減の深刻化とこの先も目処の立たない現状を察し、旧友たちが結託してくれたのである。

「すまん、ありがとう。けど、この金額は……」
「ワシひとりのではない。ヨメと子供と、それからオカンとオトンからじゃ。米はなんぼでも送るけぇ」

広島の血が流れる剛毅木訥な男の一言に、思わず声が詰まった。
現金はもとより、それぞれの言葉でしたためられた手紙は何にも勝る糧になる。
連休前には高校大学を共にした地元の親友から目の覚めるような、前向きになれる電話をもらった。

御多分に洩れず、この先のスケジュールは真っ白である。
いっときは酒に溺れてしまうかもしれんな、などとアホな心配をしたこともあったが、ここはひとつ、遠方から弓矢のごとく飛んできた熱量を力に変える時間にしたい。

そう思わせてくれた、彼ら彼女らに恥じることのない日々を。
感謝。


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