都内で仕事を終え、東京駅へ。
「かがやき」で2時間半。19:56に金沢駅に着いた。
駅前のビジネスホテルに荷物を置き、おでん屋へ。
車麩、バイ貝、カニ面。
おでん以外では、小ぶりのスルメイカを軽く干し、肝ごと炙った「もみいか」がおすすめとのこと。能登名物らしい。
締まった身のうまみと、絶妙な苦味。絶望的に酒がすすんだ。
翌朝、青空が広がった。
金沢から南西に20km。かつて北前船の寄港地として栄えた美川へ。
美川では江戸時代からふぐの糠漬けが食されてきた。ふぐを1年糠漬けにすると毒が抜ける。なぜ抜けるのかはいまだにはっきりわかっいないらしい。加賀藩主前田家にも献上され、遠く江戸へも届いたという記録が残っている。
当時はふぐは「ご法度」とされ、幕府は禁食を命じていたはずである。よっぽどうまかったに違いない。
ご主人が「ちょうどいいころです」と、卵巣の糠漬けを樽から取り出してくれた。
「食べてみます?」
「ぜひ」
「怖いから先どうぞ」
知識もさることながら、ご主人のユーモアが光る取材だった。
手取川に沿うように車を走らせ、白山鶴来方面へ。
まだ雪が残る連峰がくっきりと見えた。
酒、こうじ、味噌、醤油、酢。鶴来地域には発酵文化が色濃く残っている。
まちのあちこちで地下水が汲み上げられていた。霊峰白山の雪解け水が伝統の源だという。
その翌日もよく晴れた。
白峰へ向かう道中に突然広がった手取川ダムの光景が、この旅の一番の収穫だった。